緊急事態宣言が出され、皆さまいかがお過ごしですか?私は舞台の予定がなくなり残念な反面、こんなに穏やかな気持ちは久しぶりで、今後の人生についてじっくり自分と向き合っています。
もしコロナ問題が起きていなかったら、今日は新国立劇場『ホフマン物語』の初日でした。
私達歌い手は本番に向け色んな準備をする訳ですが、その一つとして昨年、このオペラの原作作者であり主人公でもあるE.T.A.ホフマンが住んでいたベルリンに行ってきました。
『Lutter & Wegner』というレストランが今もあり(1811年設立とある)、彼はこの同じ建物に住んでいたようです。
『ホフマン物語』は“ルーテルおやじの酒場”で起こります。そう、まさにこのレストラン(名前から)‼︎ここに酒の妖精とミューズが現れ、ホフマンが夢中になっている歌姫ステラから彼を奪い返そうと親友ニクラウスに変装します。
今でもこのレストランの隣にはコンサートホール(ステラが出演していた?)があり、近くには音楽大学やベルリン国立歌劇場が。昔も今もこの辺りには若き芸術家が住み、夜な夜なこの酒場に集まってはホフマンと芸術について語り合っていたのでは…と勝手に想像。
ここでホフマンは、オランピア・アントニア・ジュリエッタ3人の女性との自分の恋物語を話して聞かせます。

〜今にも酒の妖精とミューズが出て
きそうな樽を発見
オペラ最終幕、悲しい結末の恋話ばかりを語り終えたホフマンが再び若者達と酒をあおり騒いでいると、ドン・ジョヴァンニの公演を終えた歌姫ステラが酒場に入ってきます。
〜因みにホフマンの本名はErnst Theodor Wilhelm Hoffmann。敬愛するヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトにあやかってErnst Theodor Amadeus Hoffmannというペンネームにしたらしい。作曲家オッフェンバックはその事を知っていて、台本にモーツァルトの話を入れてきたのかもしれない…と考えるとまた楽しさ倍増〜
酔い潰れたホフマンを尻目にステラは顧問官リンドルフと去ってしまいます。1人になったホフマンに、ミューズは寄り添い幕となる。。。
〜ホフマン物語そのものの雰囲気が今なお感じられる
やっぱり訪れてよかった。
今までスペイン(カルメン)、留学していたイタリア・フェッラーラ(コジ・ファン・トゥッテ)、ザルツブルグ(モーツァルト全般)、ウィーン(ばらの騎士)、ギリシャ(ヨーロッパの物語には欠かせない)、長崎(蝶々夫人や沈黙)、フランス・パリ(椿姫)など、趣味の旅行ではあるがオペラの物語を実感したいのもあり色んな所を訪れました。
今はインターネットで実にリアルに色んな物を見て知る事ができますが、やはり実際にそこへ行って、体験して、感じたものには勝てません。
いつかまたミューズとニクラウスを歌い演じられる日が来ますように。